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税務署からの質問状、税務調査対応 - ②

 前回は税務署からの質問状(SP2DK)への対応について、見てきました。(税務署からの質問状、税務調査対応) 今回は、税務調査対応の要点についてです。


 インドネシアにおける税務監査のプロセスは、非常に入念な準備と理解が必要なものです。よく知られている通り、還付請求をすると必ず税務調査が入りますが、還付請求をしなくても、向こうから税務調査にやってくることがあります。逆に言うと、還付請求しなければ、必ず税務調査が入るわけではありません。この点よく誤解されていますが、法人税の納税というのは「自己申告が原則」の仕組みであり、税務調査されることはむしろ「例外」なのです。実際のところ、統計的にも税務調査が入るのは約30%以下です。税務当局も全ての企業の全ての年度の税務調査をするのは現実的に不可能なのです。

 そのため、税務当局は違反の可能性がある納税者を、効率的に自動で特定するシステムを用いており、過去に延滞税を払っている企業や、海外との取引を頻繁に行っている企業は要注意です。  税務監査には二つのタイプが存在し、一つはすべての税目を対象とするもの、もう一つは特定の税目だけを対象とするものです。法人税の還付を申請した場合には前者が、付加価値税の還付を申請した場合には後者が適用されます。つまり、付加価値税の還付請求をした際には、付加価値税に関係することしか調べられません。

税務監査のステップは以下の通りです:

  1. 監査の開始を通知する公式文書の受領 (SPPP)

  2. 依頼された書類の提出

  3. 税務署側による提出資料の検証とフィールド調査

  4. 調査査定書(SPHP)と納税者側のポジションペーパーの回答

  5. 税務署からのポジションペーパーに対する回答

  6. 徴税決定通知書(STP)の発行

 監査の開始は税務調査開始通知書(SPPP)によって通知され、書類の提出が要求されます。この段階では、提出期限の延長を税務署と交渉することが可能です。「どういう書類を提出して、どういう書類を提出しないのか」、「どういう説明の仕方をするか」など、微妙な判断と深い専門性が求められます。したがって、この段階から、資料の内容や提出方法については外部の税理士や専門家の支援を得ることが賢明です。

 資料提出後、税務官による詳細な審査が行われ、ここでは誤解を避けるための税務官との密なコミュニケーションが極めて重要になります。コロナ禍の影響でフィールド調査が行われないケースも増えており、メールでのやり取りが主流になっています。  次いで、税務官によって調査査定書が作成され、納税者は不服がある場合にはポジションペーパーを提出して反論する機会がありますが、税務署側の明らかな認識違いがあるケースを除いて、この段階での変更は一般的には難しいとされています。  最終的には、徴税決定通知書が発行され、その内容に同意するか異議を唱えるかを判断する必要があります。異議申し立てを行った場合、納税者はさらに2つの選択があります。

①いったん徴税通知書の納税を行った上で、異議申立てに進む

②納税を一切せずに異議申立てに進む

 ①の場合、後に異議申立てが認められたり、裁判で勝訴した場合には、月利約0.5%(2023年11月現在)の利息補償を受けられます。逆に②で敗訴した場合には、追加で罰金が科せられます。(異議申立ての却下: STPから更に30%追加納税、税務裁判の敗訴: STPから更に60%追加納税

 どのくらいの確率で勝つことが出来そうか、先に納税しておくだけのキャッシュフローがあるかなどについて、専門家と相談したうえで、判断することをお勧めします。

 このようにインドネシアでの税務監査は複雑であり、事前の準備と適切な専門知識が不可欠です。現地スタッフと駐在員の間でしっかりと情報共有を行い、必要に応じて外部専門家の助言を仰ぐことが、不意の税務問題を避けるための鍵となるでしょう。

     次回以降は、税務調査でのケーススタディーを見ていきたいと思います。

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