現物給付の取り扱い、2022年度個人確定申告
- F&A Writer
- 2023年1月3日
- 読了時間: 4分
確定申告の時期になりました。外国人の場合は、インドネシア居住者であれば仮に0申告であっても基本的に確定申告義務の対象になります。
確定申告の前に、会社が負担している駐在員のアパートなどの、「現物給付」の取り扱いをどのようにするのか、気になっている方も多いと思います。21年度末の税制改正により、22年度から現物給付が原則として個人所得課税となる、と規定されましたが、どこまでの現物給付が対象となるのか、またその計算方法が曖昧なままでした。税務コンサル会社によっては見切り発車で、月次ベースですでに現物給付の個人所得課税をクライアントに指示していることもあったり、各会社で対応が異なる状況が続いていました。これらは細則で別途定めるとのことでしたが、なかなかその細則が出てこず、遂に年末を迎えようとしていた12月20日付で、ようやく”PP55 Tahun 2022“ が公布されました。
【PP55 Tahun2022 で定められた現物給付の取り扱い】
多くの方が気にされているアパート費用についていうと、結論としては、以下の通りです。
「アパート現物支給は、22年度から個人所得課税。期間按分か現金支出時に計算・申告をする。2022年1月から適用とするが、確定申告(SPT OP)で追加申告した場合は、今回に限ってペナルティーは課されない。23年度からは、月次の申告(PPh21)で申告していくことが要求される」
1月10日に年末調整がありますので、まだ間に合う会社は、12月度の年末調整で調整することも選択肢としてあります。
PP55では、個人所得に含めなくてよい現物給付のケースが記載されています。
a. すべての従業員に提供される飲食費
b. 特定の場所において提供される現物給付
c. 業務遂行のために会社が提供しなければならない現物給付 (ユニフォーム、シャトルバス、感染症対策費用を含む。)
d. 国税・地方国税・政府が提供する給付
e. そのほか別途定める特定の現物給付
b.について、Pasal28 にて住居も含むとされている一方で、対象となる住居は、
「公共交通機関がなかったり、開発途上の場所でリスクが比較的高い地域であり、会社がある場所から公共交通機関で通えない位置にある住居費用など」とされていますので、
僻地に出向・あるいは出張命令をした場合が想定されていることが明らかです。
したがって、日本人のジャカルタやチカランでのアパート費用は、この規定には含まれず、個人所得課税となると考えていいでしょう。
また、税制改正前は、確定申告の追納を会社が負担した場合には、その追納分を個人所得としない選択肢もありました。しかし今回、上に列挙した個人所得に含めなくてよい現物給付に含まれていませんので、こうした追納についても、個人所得課税となると考えられます。
【確定申告の概要】
課税期間は1月1日から12月31日までの暦年で計算します。2023年3月31日までが申告・納税期日です。
前述した通り、「インドネシア居住者」は0申告でも確定申告は必要になります。オムニバス法にて、6カ月以上のITAS(就労ビザ)の保持によって「居住性」が判断されることが明記されましたので、1年のITASを保持している場合は、自動的に確定申告の義務にかかります。
申告する所得について、総支給額を使うか、社会保険料等を控除した手取り額を使うか、というご質問をよく頂きますが、社会保険料等は、本来は個人のベネフィットであり、代わりに会社が支払っているだけですので、社会保険料を控除する前の総支給額を使うこととなります。
日本本社で負担されている給与については、月次の申告に含まれていませんので、確定申告時に含めて追納をすることになります。一方で、デビットノートで毎月インドネシアに請求がきている給与分については、月次の申告に含めているはずですので、確定申告での追加申告は不要です。
また、予納制度があり、確定申告で追納した分を12等分して、確定申告後に毎月納税していく必要があります。
【全世界所得課税方式の意味について】
インドネシアは全世界所得課税方式を採用しています。つまり、インドネシア国内に源泉のある所得のみならず、国外に源泉のある所得もインドネシアで課税されます。ここでいう「源泉」というのは、その所得が「どの国に起因して生まれたか」、ということですので、実際の現金の支払い地は関係ありません。たとえば、インドネシアで100%働いている方の給与の一部が、日本で払われたからと言っても、「国外源泉所得」にはなりません。インドネシアでの労働に対する対価ですので、これは「インドネシア国内源泉所得」になります。
全世界所得課税方式を採用していますから、「国外源泉所得」も申告対象になるのですが、そうすると国によっては2重課税が発生します。2重課税が発生しないようにするために、特定の「国外源泉所得」は、2国間の租税条約で規定が定められていることがあります。
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