現物給付課税についての細則
- F&A Writer
- 2023年8月8日
- 読了時間: 4分
過去3回にわたって、現物給付の取り扱いについて見てきました。
(第一回:現物給付の取り扱い、2022年度個人確定申告 、第二回:現物給付の取り扱い、2022年度個人確定申告 - 続報 、第三回:現物給付課税の意外な影響 - インドネシアの予納制度と利益の平準化)
国税庁長官の以前の記者会見で、2023年7月頃に現物給付課税の詳細なルールが公表されることが示唆されていました。これを受け、財務大臣規則(PP66/2023)が施行されました。2022年に公布された財務大臣規則(PP55/2022)では、現物給付課税の対象や計算方法が不明確で、2022年1月からの遡及課税が示されていたため、混乱が生じていました。
しかし、今回の詳細なルールにより、これらの点が明確になりました。 また、現物給付課税は、特に富裕層や外国人を対象として、単なる増税とみなされていましたが、新しいルールを詳しく読むと、異なる視点が浮かび上がります。合法的な節税の方法や、全体のコストを削減できる企業も存在するかもしれません。 今回は、現物給付課税の詳細なルールについて解説します。
【現物給付の範囲について】
会社から個人への現物給付だけでなく、会社間の現物給付もこの財務大臣規則の対象となります。例えば、企業間の取引で、代金の一部を現金以外の商品やサービスで支払った場合、それは課税対象となります。
以前は、「①会社側での損金算入が可能か」、「②個人側で所得税が課税されるか」という2つの観点を考慮する必要がありましたが、新しいルールでは、現物給付は全て損金算入可能である(ただし、売上げに貢献するものやビジネス関連が証明される必要がある)とされています。そのため、②の観点だけを考慮すれば良くなりました。
【非課税の現物給付】
以下は、現物給付の中で課税対象とならないケースとその限度を示すものです。

上記の中で、特に注目すべき点を詳しく見ていきます。
3.宗教大祭や、クリスマス、チャイニーズニューイヤーなどの宗教的・民族的祝日に関わるギフト
これまで宗教の大祭のギフトは、個人所得税が非課税でしたが、会社側では損金不算入でした。これが、個人所得でも非課税、会社側でも損金算入可能になりました。
4. 3.に掲げる以外のギフト
3に記載されているギフト以外で従業員に与えられるギフトは、1人あたり年間3,000,000 Rpまで非課税となりました。例えば、賞与の一部をギフトとして提供することで、非課税とすることが可能です。
5.コンピューター、携帯電話などの備品・設備や、インターネット代金、プルサ
これまで携帯電話やプルサなどが課税されるのではないかとの懸念がありましたが、これらは非課税とされました。
7.ゴルフ、競馬、ボートレース、グライディング以外のスポーツ
スポーツは1人あたり年間1,500,000Rp.まで非課税なのですが、ゴルフは個人所得として課税されてしまいます。
9.アパートなどの住居
月額2,000,000 Rpまでは非課税となりました。たとえば月額10,000,000 Rp.のアパートを、会社が負担した場合、8,000,000 Rp は個人所得として課税されます。
これも考え方によっては、従業員の給与の一部の代わりに、住居の契約・支払いを会社が直接行うことによって、課税給与を非課税給与に変えることができそうです。
10.車両
過去12か月の平均給与が、月額100,000,000Rp以下の人に支給されるものであれば、車両は現物給付として課税されないことになりました。前回の法令では、駐在員に与えられている車両すべてが現物給付課税になると思われていましたが、これは大きな変更点かと思います。
ただし、平均給与が、月額100,000,000Rpを上回っている人や、株主になっている人に与えられる車両は個人所得課税になります。
【計算方法について】
いままで明確でなかった計算方法も、以下の通り明記されました。
現物給付の評価
市場価値もしくは実際に支払った原価
もともと販売目的である商品を現物支給として供与した場合は、
a. 土地・建物は市場価値
b. 土地・建物以外は、売上原価
1つの現物給付が複数人の納税者に対し供与された場合は、合理的な方法(使用時間など)によりそれぞれの納税者に按分して課税される。
申告・納税タイミング
1年以上の期間にわたり便益を受ける現物給付 ⇒ 月割りにして償却する形で所得税を計算する
便益を受ける期間が1年未満の場合現物給付 ⇒ 便益を受け取った月で一括で所得税を計算する。
例①
会社は、2023年7月~2024年6月までの契約のアパートを、現物給付として駐在員に支給した。会社はオーナーに対し、2023年7月に、120Juta Rp. を一括で支払った。
➢2023年7月~2023年12月までの6カ月間分の60 Juta Rp.は、2023年度に申告し、残りの60Juta Rp.は2024年度に申告をする。
例②
掘削機製造会社であるPT Aは、建設業のPT Bに倉庫の建設を依頼した。契約によれば、PT AはPT Bに対し、代金の一部として、掘削機5台を無償提供することで合意している。
建設作業は2025年12月6日に完了し、PT AはPT Bに5台の掘削機を提供した。
➢掘削機5台を通常の売価で算定した金額を、2025年12月に一括で申告・納税する。
今回の細則により、現物給付に関する疑問や論争は一旦解決したと言えます。全体的に増税の方向性が強まっていますが、非課税となる項目も明確にされました。現物給付に関する法令を正確に理解し、適切に活用することが求められます。
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