インドネシアのCuti Bersamaとは？通常の有給休暇や休日との法的な違い

インドネシアは、世界第四位の人口を持つ国であり、多様な文化と宗教が共存しています。このため、インドネシアでは様々な祝祭日が存在していますが、その中でも「Cuti Bersama（共同休暇）」は特に注目に値する休暇制度です。今年は、3月末に「渋滞のピークを分散させる」との目的で、急にレバラン前後のCuti Bersama が変更されました。そもそも、Cuti Bersamaが通常の有給休暇や休日とどのように法的に異なるのかを解説します。

1. Cuti Bersamaとは？

Cuti Bersamaは、インドネシアで共同休暇として定められた制度で、国民全体が一斉に休暇を取得することを目的としています。主に宗教的な祝日を中心に設定され、政府が毎年その日程を発表します。例えば、イスラム教の終わりの祝日であるイドゥル・フィトリやクリスマスなどがCuti Bersamaに含まれます。

2. 通常の有給休暇や休日との違い

Cuti Bersamaは、通常の有給休暇や休日と以下のような点で法的に異なります。

• 労働者の権利ではない

通常の有給休暇は、労働者が働いた期間に応じて法律で保証された権利ですが、Cuti Bersamaは労働者の権利ではありません。Cuti Bersamaはあくまで政府が働く国民に対して推奨する休暇であり、企業は従業員にCuti Bersamaを与えるかどうかを自由に決定できます。

• 労働者への通知が必要

通常の有給休暇では、労働者が自分の休暇を取得したい日を事前に申請し、企業が許可することで休暇が認められます。しかし、Cuti Bersamaでは企業が事前に労働者に対してCuti Bersamaの日程を通知する必要があります。

• 労働者への代替休日の提供

Cuti Bersamaを取得しない労働者に対しては、企業は別の代替休日を提供することが「推奨」されています。これは、Cuti Bersamaが国民全体の休暇を促進する目的を持つため、労働者が働く場合でも適切な休暇が確保されるようにするためです。

• 労働者の賃金

Cuti Bersamaにおいて、企業が従業員に休暇を与える場合、労働者には通常の賃金が支払われるべきです。ただし、労働者がCuti Bersamaを取得しない場合、企業はその代わりに通常の賃金に加えて出勤手当を支払うことが「推奨」されています。

3. 新入社員や有給休暇未取得従業員への対応策

労働法上は、入社1年後に12日間の有給休暇が初めて与えられます。通常は、有給休暇をCuti Bersamaに充当することが多いですが、新入社員や有給休暇未取得の従業員に対しても、Cuti Bersamaの対応は重要です。以下の対応策の検討が必要です。

• 通常の勤務日とする。

有給休暇未取得の従業員については、通常の勤務日としておいて、従業員の希望で休む場合は、給料を控除することは可能です。ただし、従業員が出勤することを選択した場合、取引先や他の従業員の多くがCuti Bersamaを取得している中において、効率的な仕事ができるかどうかは、十分な検討が必要です。前述の通り、Cuti Bersamaの日に出勤する従業員に対しては、通常の賃金に加えて出勤手当を支払うことが推奨されています。

• 無償でCuti Bersamaを与える

新入社員や有給休暇未取得の従業員に対しても、無償でCuti Bersamaを与える企業もあります。これにより、従業員の労働環境を改善し、従業員満足度を向上させることが期待できます。

• 年次休暇を前借りとし、翌年の有休休暇より相殺する

年次休暇の前借りとし、翌年の有給休暇より相殺している会社もあると思います。ただし、

この場合、一年以内で自主退職するような従業員にとっては、結局無償でCuti Bersamaを与えたことと同じになります。また、翌年の有給休暇より相殺する旨は、事前に従業員と同意しておく必要があります。

4. まとめ

Cuti Bersamaは、インドネシアの休暇制度の中で独特な存在であり、通常の有給休暇や休日とは異なる法的な扱いがされています。Cuti Bersamaは労働者の権利ではなく、企業が従業員に与えるかどうかを自由に決定できる休暇です。しかし、企業は従業員にCuti Bersamaの日程を通知し、Cuti Bersamaを取得しない労働者には代替休日を提供することが推奨されています。また、Cuti Bersamaで強制的に休暇を取得させる労働者には通常の賃金が支払われるべきであり、Cuti Bersamaを取得しない場合は通常の賃金に加えて出勤手当が支払われることが推奨されています。

インドネシアで事業を展開する企業にとって、Cuti Bersamaは労働者との関係を円滑に進めるために重要な休暇制度です。適切な取り扱いを行い、企業活動を継続することが求められます。