インドネシアにおける会計監査と法人税申告のポイント
- F&A Writer
- 2023年4月11日
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今回は、インドネシアにおける会計監査と法人税申告について、解説します。12月決算の会社も多いと思いますが、12月決算の場合、法人税申告は原則として4月末までに行う必要があります。3月決算の場合は7月末です。そのため、現在会計監査や法人税申告の対応に追われている会社も多いことと思います。特に注意すべき点や、混同されがちな会計監査と税務監査(税務調査)の違いにも触れていきます。
1. 会計監査と法人税申告の目的と期限
会計監査は、会社の財務諸表が適切に作成されているかを評価する目的で行われます。一方、法人税申告は、会社が正確な税金を支払っているかを確認するためのプロセスです。インドネシアでは、12月決算の会社は、会計監査を翌年の4月30日までに完了し、法人税申告を翌年の4月30日までに提出する必要があります。なお、4月30日までにどうしても監査が完了しない場合は、法人税申告の期日を最長2か月まで延長申請をすることは可能です。しかし、その場合でも法人税の納税期日は4月30日のため、監査が完了しなくても法人税はある程度見込みで納税しておくことが重要です。(後に算出された実際の法人税との差額部分については、追徴が課されます。)
2. インドネシアにおける注意点
インドネシアでは、以下のような点に注意して会計監査と法人税申告を行ってください。
会計基準: インドネシア財務会計基準(PSAK)に従って財務諸表を作成することが求められます。
税務署への報告: 法人税申告には、インドネシア税務署(Direktorat Jenderal Pajak)が定めるフォーマットに従った報告書を提出する必要があります。
電子申告: 法人税申告は、インドネシア税務署のオンラインシステム(e-Filing)を使用して行う必要があります。
3. 会計監査と税務監査(税務調査)の違い
会計監査は、会社の財務諸表が適切に作成されているかを評価するものですが、税務監査(税務調査)は、税務署が行う税金に関する調査です。税務監査では、会社の税務申告や税務記録が適切かどうかがチェックされます。会計監査は主に外部監査人が行い、税務監査は税務署の職員が行います。また、会計監査は通常、定期的に実施されますが、税務監査は税務署が必要と判断した場合や、税務違反の疑いがある場合に実施されます。
前述の違いによって、それぞれの監査で指摘されやすい方向性が異なります。
例えば、株主や銀行に決算を良く見せようと考えて、「利益を増やしたい」という意図が働いたと仮定します。すなわち、売上を増やすか、費用を減らすかのどちらかの操作を行うことになります。この場合、「会計監査」では指摘される一方で、「税務監査」では指摘されることはそれほど多くないです。「会計監査」では、財務諸表が意図的に改ざんされ、会社の利害関係者(株主・銀行・取引先など)が誤った意思決定を下すことが無いよう、企業の状況を正確に表示しているかどうか評価されます。一方で「税務監査」では、適切に法人税を報告し・納税しているかが主眼ですので、利益を大きくして、法人税を多く払う分には何も言われないことが多いです。
逆に、法人税を減らそうと考えて、「利益を減らしたい」という意図が働いたと仮定します。すなわち、売上を減らすか、費用を増やすかのどちらかの操作を行うことになります。この場合、「会計監査」、「税務監査」の両方で指摘される可能性が高いです。利益を減らすということは、より「保守的」に財務諸表を報告することになるため、「会計監査」の観点では利益を増やす方向性と比較すると、見逃される可能性は少しだけ高いです。しかしながら、「利益を減らす」という方向性であっても、会社の利害関係者に誤った意思決定を促すことには変わりありませんので、「会計監査」ではいずれにしても指摘されます。一方で「税務監査」では、こうした操作は度を越えれば「脱税」ですので、当然指摘されます。
これらをまとめたのが下の表です。

いずれの目的にしろ、一部の合法的に認められている手法を除き、意図的な財務諸表の改ざんは行ってはならないことです。
4. 会計監査と法人税申告に向けた準備
会計監査と法人税申告に向けて、以下のような準備を行っておくことが重要です。
財務諸表の整理: 会計監査に備えて、財務諸表を整理し、適切な書式に沿って作成しておくことが必要です。
税務記録の整備: 法人税申告には、税務署が求める書類やデータが必要です。これらを整理し、適切に保管しておくことが重要です。
会計監査人との連携: 会計監査人との連携を密に行い、監査の進行状況や問題点について適切に把握しておくことが求められます。
5. まとめ
12月決算の会社は、会計監査を翌年の4月30日までに完了し、法人税申告を翌年の4月30日までに提出する必要があります。インドネシアでは、会計基準や税務署への報告に注意して、適切な準備を行っておくことが重要です。また、会計監査と税務監査(税務調査)は異なる目的で行われるため、それぞれのプロセスを理解し、適切に対応することが求められます。
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